箕山スポーツ医学塾(File №13):Iselin's disease (Apophysitis of the base of the fifth metatarsal)

【箕山クリニック:Doctor】  Iselin's disease(イセリン病:第5中足骨粗面骨端症)とは、サッカーなどカット動作の多いスポーツでみられる骨端症です。 短腓骨筋腱の牽引負荷により発生すると考えられており、運動を制限すれば3~6週で改善します。レントゲン上での改善がみられなくても、身体所見での改善がみられれば、復帰させて問題のない疾患です。  スポーツ整形外科分野においては、珍しい疾患ではありませんが、今回の症例(11歳 男性)では反対側(右)の第5中足骨にも障害が発生しており、そちらの発生部位が小児において珍しい症例であったので紹介します。
   

11歳 男性の右足のレントゲン写真

 外傷歴はなく、左側同様に数カ月前より疼痛があるとのことで、来院されました。ドリリングをするべきかどうか悩みましたが、初診より2ヶ月後、圧痛や腓骨筋抵抗下痛が消失したため、悪化するようであればドリリングしようということで、復帰させてみました。1ヶ月後(初診より3ヶ月後)に確認したところ癒合していました。
This apophysitis is caused by traction of peroneal brevis and is often seen in cutting maneuver sports. This case also had the contra-lateral side (right) 5th metatarsal injury and it occurred at the rare portion in children sports injuries.
Iselin's disease? Jones' fracture? avulsion fracture?(no history of the ankle sprain)

This x-ray is the right 5th metatarsal of the patient who had the left Iserin’s disease, which was reported last time. This was not acute injury and he did not experience the ankle sprain before.
The pain was not aggravated by the physical examinations after 2 months, however the surgical treatment (drilling) was supposed. Hence, he returned to play football and the x-ray showed the callus after 1 month.
【投稿コメント:Doctor】
スパイクの使用を禁止することで地面からの衝撃が緩和して痛みが軽減するケースもあります。足部のalignmentが悪い場合はinsole調整や、タイトネスがみられる場合は、ストレッチの指導をしたりしています。
【箕山クリニック:Doctor】
確かにスパイクの影響はあるかと思います。この少年は、外反膝、扁平足でした。その他の症例では、ハムストリングスタイトネスがありヒップコントロールが悪かったり、カーフもタイトネスがあり足関節の背屈可動域制限があるため、トゥーアウトの代償が強かったりなども原因として考えられます。やはり小児は柔軟性向上が障害予防に必要ですね。

【投稿コメント:理学療法士】
立方骨の回外・底屈といった外側アーチのマルアライメントが、第5中足骨に(回旋+曲げ(背屈方向)+牽引)といった複合的なストレスを生み出すとは考えられないでしょうか? 外側アーチを整えることで歩行時痛が軽減する例があります。
レントゲンを拝見しますと、第5中足骨の回外により、第5中足骨底部が荷重ストレスにさらされているようにも見えます。牽引ストレスが主役であることは間違いないとはおもいますが、左右差があるとすれば何かしら別の要因もあるのではないかと考えます。
【箕山クリニック:Doctor】
コメントありがとうございます。我々医師では考察しきれないハイレベルな考察でとても勉強になります。以前投稿いたしました立方骨の障害も含めて外側アーチが関与していると思われますので、今後気をつけて診ていきます。捻挫を繰り返している症例などは、外側アーチのマルアライメントを呈しているかもしれませんね。ありがとうございます。

【投稿コメント:Doctor】
レントゲンでは分節化しているようにみえますが、これは良くあることですか?
【箕山クリニック:Doctor】
10歳前後の時期に、PB(短腓骨筋)のtraction(牽引)で分節化します。結構診ることが多いです。痛みを訴える者から、大した痛みではないので放置する者まで様々なのではないかと思います。うちみたいなクリニックでは、サッカー少年がちょっとした痛みでも来院するので、診る機会が多いのではと思います。不思議と骨片として残ることはありません。今回の症例は、成長が早く、骨化が進んでおり通常よりも治るのに時間がかかりました。
【投稿コメント:Doctor】
以前に成人例の経験があります。遺残した骨片がPBに引かれて、転位したものでした。骨折や過剰骨のOs Vesarianumとの鑑別などを論点の一つにしました。
【箕山クリニック:Doctor】
先生の症例では遺残していたということですね?珍しい症例ですね。位置が違いますがOs peroneumは、もしかして何らかの遺残なのかと思ってしまいますね。

【投稿コメント:Doctor】
今回の症例は本当に外傷の機転がないのですか?骨折線の走行からはIselinでなく、avulsionのようで、治癒機転もまるで外傷のように感じます。
【箕山クリニック:Doctor】
不思議な症例でしたが、間違いなく慢性障害でした。この症例は関東労災スポーツのカンファレンスでコンサルトをしたのですが、JユースをみていたDoctorが、Iselinは何例も見てきたが、これは初めてという症例でしたが、どんなにひどいIselinも勝手に治るから経過を見てみてはということで、それでダメならdrilligをしようということでした。