箕山スポーツ医学塾(File №9):二分膝蓋骨bipartite patella

【箕山クリニック:doctor】
とくに珍しい疾患ではありませんが、以前に紹介したOsgood-Schlatter病(詳しくはこちら)と同様に、臨床経験からすると一般的に報告されている治療方針が適切とは思えないので、紹介いたします。
二分膝蓋骨bipartite patella(以下BP)は、明確な疼痛を出すことが少く、特に小児では、「膝の前が痛い」と漠然とした訴えであったり、「膝の下のほうが痛い」など、発生部位とは違った部位を訴えたりするため、初期段階を見逃す傾向にあり注意が必要です。
 好発部位 : ほとんどが上外側か外側。
 視診 : 膝蓋骨上外側がやや突出している。
 圧痛 : 膝蓋大腿関節側からでないと確実に圧痛は確認できない。
 誘発痛 : Quad.抵抗下痛がみられる。
Osgood-Schlatter病(以下OS病)同様、運動禁止させることなく、適切なリハビリを行えば、運動を許可しながらでも癒合させることが可能です。


写真は、左膝レントゲン(P→A)やや外旋させ膝蓋骨外側が大腿骨と重ならないように撮影している。
初診より運動禁止させることなく定期的にリハビリを実施、約2ヶ月後のレントゲンで癒合傾向にあり、疼痛も消失。

今まで数多くの、OS病や二分膝蓋骨bipartite patella(以下BP)を診てきましたが、いずれも同じ膝前面のスポーツ障害でありながら、OS病とBPが合併しているという症例を今のところ確認した事がありません。
OS病は単独で存在し、BPはSinding-Larsen-Johansson病(SLJ病)または、long-nose(以下LN)を伴った膝蓋骨低位=patella baja(以下PB)を合併している事が多い傾向があります。
OSは以前述べたように(詳しくはこちら)大腿四頭筋(以下Quad.)の過度なeccentric負荷により、発症すると考えられますが、SLJ病やLNの場合は、Quad.の収縮不全から膝蓋骨下部組織のstiffnessが発生し、PBとなり、そこへQuad.のeccentric負荷がかかることにより発症するのではないかと推測されます。
BPのほとんどが、上外側または外側が発生部位である事から、間違いなくVastus Lateralis(VL:外側広筋)・Tensor Fascia Lata(TFL:大腿筋膜張筋)・Ilio-Tibial Band(ITB:腸脛靭帯)のtightnessが原因で発症していると考えられます。
BPの外側組織のtightnessはVastus Medialis(内側広筋)の収縮不全をきたし、それによってSLJ病・LN・PBの合併に繋がっていくのではと考えています。

写真は、BPの側面像。SLJ病(LN)、PBを合併している症例。

【箕山クリニック:rehabilitation】
前述のとおり、BPの発生部位は上外側や外側がほとんどで、VL・TFL・ITTのtightnessによって発生してくると考えられます。これは、やはり発育(筋・骨格)の影響を考えると、hamstringなどのtightnessによって、骨盤が後傾位になり、体幹が不安定な状態となることで、臀筋群と内転筋群が協調して機能しなくなり、外側へ体重が逃げてしまう事などが原因として考えられます。
rehabilitationの方向性は、OS病と大きくは変わりませんが、少しアレンジを加えたリハビリが効果的かもしれません。

大腿外側のselfmassage(左)quad. setting(中央)、ボールを挟んでのグッドモーニング(左)

思春期に見逃されたり、癒合しなかったBP(有痛性)は、長期間のdynamic alignment不良によって、patella下部組織のstiffnessやTFL・ITTのtightness、またQuad.(とくにVastus Medialis)の萎縮がみられます。
この状態は、BPの疼痛(とくにpatella-femoral joint側の疼痛)だけでなく、膝蓋骨周囲に様々な疼痛を出していることも少なくありません。
膝の角度によってpatella tendonやpatella-femoral jointへの負荷は変化してきますので、上記のように理学療法士(PT)のrehabilitationによってPatellaの動きやtightnessを改善していくこと、並行して疼痛の部位や出方を確認しながらathletic rehabilitationを進めていくことが大切になります。