箕山スポーツ医学塾(File №6): 小児の足関節捻挫 外踝裂離骨折

 

【箕山クリニックDoctor】
小児(10~12歳ぐらい)における足関節捻挫で、腫脹が強い場合は、裂離骨折を疑わなければなりません。
(9歳以下は、まだX-rayに写らない骨化していない軟骨部分の裂離。13歳以上では発生率低下。)
2~3年ほど前に、ある学会誌に裂離骨折を見逃さないようX-ray(レントゲン写真)だけでなく、MRI(magnetic resonance imaging=核磁気共鳴画像法)も撮影しましょうといった内容の投稿がありましたが、X-rayだけで十分に診断をつけることができます。
何故かあまり知られていませんが、1998年のJBJS(The Journal of Bone and Joint Surgery)で、東京警察病院の原口直樹先生が、すばらしい撮影方法を論文発表されています。
①ATFL view [底屈45度、内側を15度上げて足底を浮かせる]
②CFL view [内旋45度]
写真は、APでは分らない裂離がATFL viewで発見できた症例です。このようにX-rayだけで十分診断をつけることができます。

【投稿コメント:ドクター(某Jリーグチーム)】
確かに小児の剥離骨折は多いですね。私もMRIは全く必要ないと考えています。またエコー(超音波検査)でも良くわかりますよ。
【投稿コメントM’s AT project Athletic Trainer】
以前所属していたクラブにエコーがあったので使用したことがあります。撮りなれないと難しいなと思いましたが、ドクターが撮った時に骨膜の連続性が途絶えたのを確認できた時はとても驚きました。物療やマッサージをする事で起こる変化を見る事ができたのがとても印象的でした。
【箕山クリニックDoctor】
以前にロンドンで勉強していたときに、放射線科医がすごくエコーうまくて整形外科疾患も診断してくれました。腓骨筋腱のlongitudinal tearなども明確に描出してくれるのに驚きました。X-rayがすぐに撮れない現場での検査に便利ですね。


【箕山クリニック:rehabilitation】
治療方針(rehabilitation)小児の足関節外踝裂離骨折 治療方針

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初期段階で癒合させようとする治療法を選択します。骨片が残らないに越したことはありませんし、また骨を癒合させようとする治療法を選択しなければ、腫脹が長引き復帰が遅れることも考えられます。
U字キャストでは不十分なことが多いです。靭帯の修復過程での固定と違い、底屈の動きで癒合しにくくなるので。可能ならばL字キャストにて固定する。

小児の場合、拘縮は起こりにくく、ROM(関節可動域)はすぐに改善しますが、疼痛に対する伸筋群の抵抗反応で、底屈ROMが改善しにくい場合があるので注意が必要です。
「大袈裟な固定を」と親御さんに思われることがあるので、上記のような期間がかかることをしっかりと説明し合意のうえ、治療をしています。癒合させなくてもいいということになれば、腫脹減少のため2週のみのU字またはテーピング固定として、3週復帰を目安に治療を進めています。

【投稿コメントM’s AT project Athletic Trainer】
3週までは荷重しないということでしょうか?また底屈の動きで癒合しにくくなるということは、底屈で骨片が遠位に牽引されるということですか?
【箕山クリニックDoctor】
L字キャストにした場合歩きにくいですが、通常のATFL損傷同様に初日からFWB(full weight bearing)です。
裂離骨折の場合、靭帯損傷のように底背屈を行うことで、線維配列が整い修復しやすいという訳にはいきません。質問のとおり底屈の動きで、骨片が遠位に牽引されるので癒合しにくくります。