箕山スポーツ医学塾(File №12):姿勢によるタックルの違い

Good posture may reduce the cervical injuries in American football
胸椎後弯(不良姿勢)はこんなスポーツ外傷にも影響!?

 

姿勢不良とspearing(スピアリング)(写真左)と、良い姿勢と額部より当たる良いタックル(写真右)
※ スピアリングとは、タックルの際に頸椎外傷のリスクが高まるため禁止されている頭頂部よりヒットする行為 Torgがspearing禁止を決めてから、圧倒的に頚椎・頚髄損傷の発生率は低下

【箕山クリニック:Doctor】
 不良姿勢は、パフォーマンス低下やあらゆる部位の障害へ繋がるだけでなく、アメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツにおいて、よくみられる頸椎外傷やバーナー症候群のような急性外傷にも影響するかもしれません。
 バーナー症候群を繰り返す選手がよく言うのは、「オフ(シーズン)には、頚部周囲の筋力強化もしたし、自分ではちゃんと額でヒットしているつもりなのに、ビデオで見てみるとスピアリングになってしまっている」そんな選手に特徴的なのは姿勢不良です。頸椎アライメントの問題が要因としてよく挙げられますが、こういった外傷も局所だけに注目せず、胸椎後弯による同レベルのmobilityを改善し、core stabilityを上げることで、予防できるのかもしれません。

‐・‐余談‐・‐
 バーナー症候群の主な原因は、腕神経叢の牽引負荷です。牽引負荷により腕神経叢の上部C5が損傷を受けるため、deltoid(三角筋)、biceps(上腕二頭筋)、supraspinatus(SSP:棘上筋)、infraspinatus(ISP:棘下筋)などC5支配筋のMMTが低下します。そのなかでも最後まで筋力低下が残るのはSSPとISPです。意外と見落としている場合があるので注意が必要です。両筋とも肩甲上神経支配ですが、この神経枝はちょうど牽引が一番かかる部位でC5より上方へ分枝しています。バーナー症候群が牽引負荷であることの裏付けと考えられます。

【投稿コメント:理学療法士】
アメリカンフットボールではブルネック姿勢という肩すくめ姿勢で頸椎を守る方法があるらしいですね。ある研究ではブルネック姿勢で額への後方外力に対し頭部後方加速度の低下が認められていますが、胸椎後弯の強い人には逆に不良姿勢を助長してしまうこともあるのだろうかと疑問に思いました。先生の実例に基づくお話は勉強になります。