「医学教育」 2005/05/28
模擬患者(Simulated PatientまたはStandardized Patient;略称SP)というのをご存知でしょうか。医学生に患者さんとのコミュニケーションのとり方、問診の仕方、診察方法、治療の説明の仕方などを学ばせるために、患者さん役を行ってくれる人を言い、専門家が作った台本を覚えていて、「のどが痛い」、「頭痛がする」などの症状を訴え医学生の質問に応じて演技で答えて行ってくれるのです。
患者さんの訴えからどれだけの病名が頭に浮かぶか、きちんとした知識があることが大前提であるが、第6回スポーツ外傷講義でも触れたように、診断の基本はまず聞くということであり、問診によって頭に浮かんだ疾患をうまく絞り込んでいけば、おおかたの診断はつく。そういった意味で、診察の練習をするにはSPさんの存在は非常に助かると思う。我々が医学生の頃には、こういった教育が無かったが、米国ではこのSPさんによる教育が徹底して行われているようで、最近日本でも積極的に取り入れている大学があるようだ。
この教育、とてもいいことだと思うが、お偉いさん方が必死になって広めようとしている目的がどうも外れているような気がする。上記のような診断学の勉強のためというより、近年医師の信頼が薄れていたりドクターハラスメントの問題がおきたりするのは、医師のコミュニケーション能力が不足しているからだと、コミュニケーションのとり方を勉強しようというのが主な目的となってしまっている。あれっ?って思いませんか?コミュニケーションのとり方って、教わるものなのでしょうか?自らの社会経験で身につけるものでは?それに、コミュニケーションがきちんと取れる人間かどうかって、まずは入学の際に学力だけじゃなく面接で判断しておけって思いますよね。お勉強ばかりで、世間知らずのままお医者様になった人が、同じく世間知らずでお医者様になろうとしている学生に考えてあげることは、やはり世間知らずなことなのだ。聞くところによると、SPさんとお勉強した後には、きちんとSPさんから「あの時の話し方は失礼な言い方だった」とか「目線がどう・・・」とかダメ出しをしてもらうらしい。つまり、患者さんとの対話も、接客サービスのようにマニュアル化したいのである。1対1の信頼関係で成り立つはずの医療って、こんなことなんでしょうか。何か、おかしい。
私だったら、学生にどうするか。いろんなアルバイト、特にサービス業を経験してこいというだろう。社会の中で医学生以外のいろんな人と出会い、バイトで接客や人との接し方を学ぶ。わずかな時給ながらも、稼ぎながらこんな立派な経験ができるいい方法は他にない。こんなことは、人と接する職業に就こうとしているのであれば、自ら考えて行うべきことだが、そんなプロ意識の高い医学生は、日本全国ほぼいないに等しいだろう。医学部の授業や勉強は、他の学部と違って忙しいからそんなことはできない?いいえ、私は、ウェイター、厨房、工場、引越しetc、すべてこなしましたよ。
せっかく、医学教育に貢献してくださるSPさんに、本来自分で身につけるべきことまで医学生に教育してもらおうとしているお偉いさん方、キャバクラでホステスさんにチヤホヤされて喜んでるだけでなく(本当はキャバ嬢のほうが人生経験は一枚も二枚も上手で内心バカにされているのに)、あなた方もせっかくならそこで接客サービスを学んできて下さい。

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