「第7回スポーツ外傷講義 : インソール」 2005/04/12
今回は外傷(急性のケガ)というより、障害(慢性のケガ;繰り返しのストレスによって悪くなってしまっている)に対する治療として使用されることのあるインソールについてです。
インソールとは英語でinsoleと書かれ、言葉通りsoleのin側ということで内底(中敷)のことを指します。
足や足関節、膝(場合によっては、股関節や腰部も)の疼痛が、下肢のアライメントの問題や動きの中での使い方の問題、またケガをしてからの動きの異常によって起きている場合、このインソールにて足の角度をわずかでも変えてあげるだけで疼痛がなくなることがあります。
日本ではインソールという言葉が普及していますが、欧米ではOrthotics(矯正)と言われているように、足を変えてあげる治療です。
後述のように、インソールも様々なものがありますが、能力と技術を要する「入谷式」を箕山クリニックでは扱っております。
今回は、「インソール」について、箕山クリニックでの作製者である理学療法士(PT)宮澤に書いてもらいました。


インソールについて
 インソールの必要性において考えるべきは、人間は様々な動作のなかで、立つ、歩く、といった基本動作をおこなっており、さらにこの基本動作において唯一地面と接して身体を支えているのは足部ということである。この足部へのアプローチが下肢を含めた全身的な動きを誘導できるのである。全ての人間は進化の過程において、四足動物から進化し、二足歩行を獲得していった。四足歩行と二足歩行の大きな違いのひとつは、支持基底面(つまりは人間の身体を支えているところ)が極端に小さくなってしまっていることである。進化の過程において二足歩行を手に入れた人間は、狭くなった支持基底面である小さな足部(足裏といってもいいかもしれません)からの影響を足部に限らず全身的に受けることになった。例えば、靴の中に小さな石が入ってしまっているだけで、歩き方がいつもと違ってしまい、その歩き方の違いが、通常とは異なる箇所に力がはいってしまい、その通常とは異なる関節運動が疼痛を引き起こしてしまうことがある。この様な通常とは異なる関節運動は、単発的な運動が多く続くものでも疼痛が出現することは当然あるが、ランニングやサッカーなど絶えず動きを伴う運動で多く疼痛が出現することがある。この疼痛を出現させる関節運動を本人が自覚し、なおかつその異常運動を24時間意識してコントロールすることは非常に難しい。そこで、本人が意識することなく、無意識のうちにその異常運動をコントロールさせるためにインソールをシューズ内に挿入し、その異常運動をコントロールすることがインソールの目的となる。
 現在の日本では(日本に限らずそうであるが)、様々なタイプのインソールが出回っている。現状では、足型を採型しているもの、コンピューターで静止立位における足裏の凹凸を決定するものなどがあるが、これは基本的にアーチの長さと幅の決定にすぎない。足底圧を使い歩行をコンピューターで処理しているようなものはほとんど同じものか、もしくは部分パッドを追加しているようなものである。また既成パッドを貼付するようなものがあるがその方向性はみえていない。あくまでもインソールを作成する目的は、その人がもっている異常な関節運動を本人が“立つ”“歩く”といった基本動作から“走る”といった動きまでコントロールされなければならない。
 当クリニックで処方している足底板は『入谷式足底板』といい、他の方法と最も違っていることは、足底板を作成する前に足部テーピングやパッドを用いた評価により、足部各関節の肢位を決定し作製することである。実際には、足部は大きく前足部・中足部・後足部に分けられ、このうちの前足部と後足部に対して(中足部は全体としてひとつの塊としてみなされるので)テーピングを用いてそれぞれの部位の肢位をまずは決定し、さらに部分パッドを用い、全身的なバランスを決定していく。基本的なインソールの形状が決まり、実際のインソールが作成されたなら、次にはインソールが挿入されたシューズで歩行や立ち上がりなどを行い、動きやすさや疼痛の有無でもって微調整を加えて完成させていく。こうして最終的に、何回かの調整を随時加えてインソールを完成させていく。
 以上が当クリニックにおいて、用いているインソールの概要です。


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