「患者さん VS 患者様」 2004/11/10
私が研修医になった頃からでしょうか、一部の病院で患者さんを患者様と呼ぶようになりました。そのような風潮は私が医学生のときにすでに始まっていたかもしれません。学生時の確か内科の授業で教授が、「医療はサービス業だ。診察をお待たせしているのだから、診察室に入ってこられたときには、医師であろうとちゃんと『お待たせいたしました』の一言は言わなければダメだ」と言ったのを覚えています。それは当然だと同感。しかし医療がサービス業であることに間違いないが、サービス業であると言い切るには何となく引っかかった。そう思いながらも、医者になろうとしていたのに医者が大嫌いな私は、「こいつまあまあ良いオヤジやん」と思ったのですが、その後この教授がさらに付け加え、「患者さんは患者様とお呼びしなさい」と言った瞬間、私は少し首をかしげた。今となっては、ほとんどの病院・診療所の受付では患者さんを患者様とお呼びしているようだ。

さて、皆さんは病院へ行き、「・・・様」と呼ばれてどうでしょうか?「・・・様」と呼ばれて悪い気はなさらないでしょうが、「・・・さん」でも別に問題はないのでは?だいたい「・・・様」と言っている病院も、きっと他がそうお呼びしているからうちも(日本独特の自己意思のない行動)といった具合で、本当に心からそう思ってお呼びしているのか疑問である。しかも大抵の病院では呼び方が統一できておらず、受付では「・・・様」とお呼びする一方で、一部の看護師や医師は「・・・さん」であり、また一部の看護師や医師は「・・・様」、ひどい医師になると「・・・さん」どころか「あなた」とか「きみ」と呼んで患者さんとお話ししているのが現状でしょう。確かに受付は治療に関係がなく会計等の事務処理のみであり、医療がサービス業に位置づけされていることを考えると、受付だけでも「・・・様」とお呼びしようとする感覚は分からないでもない。しかしながら、受付で「・・・様」とお呼びしながら、受付の職員は座ったまま患者さんに対応している。本当にこれでいいのでしょうか。なんだか違和感がありませんか。

私個人の考えだが、患者さんを患者様とお呼びしてしまえば、それは患者さんをお客様扱いし、お金を払ってくれてありがとう、良くなっているのにどんどん治療に通ってお金を儲けさせてねということだと思っている。患者様とお呼びする病院・診療所に聞きたい。患者さんが病院に入って来られたら「いらっしゃいませ」と言い、お帰りになられる際は「ありがとうございました」とでも言うのですかと。「・・・様」は相手が自分より上であることを示している。かといって「・・・さん」は、下に見ているのではない。「・・・さん」も敬意を示した表現であるが、下でも上でもない同等なのである。医療はサービスだがお金を儲けるために行っているものではない。飲食や物販などのようにお客さんの贅沢のためのサービスでもない。医療は、我々医師の知識・技術のみならず患者さんと共に治そうと安心・勇気を提供している業態である。そのことに医師はプロとしての意識を高く持っておかなければならず、自分の日々の怠りが患者さんに迷惑をかけることになるのだということを忘れてはならない。そういった意味で私は、自分自身はプロ意識のあるプロフェッショナルであると自負しているし、そのことにプライドを持っている以上、患者さんをあえて上に崇める「・・・様」という表現は使わず、普通に「・・・さん」とお呼びしている。医師が偉そうに上から患者さんを診る必要は全くなければ、逆に患者さんを敢えて患者様と呼んでまで上に診る必要も全くないのである。何度も言うが、治療に入ったときから医師と患者さんの関係は、どちらが上とか下ではなく、同等なのだ。

もう一点、きっと意味もなく患者様とお呼びしている病院・診療所に聞きたい。なぜ医師を含めた全員が共通言語で患者さんに対応しないのですか?医療というものは、医師だけでなく回りの職員とともにチームで成り立つものです。医療資格者だけでなく医療資格のない者も含めて、皆が協力し合って始めて患者さんにベストなことを提供できるのです。であれば、受付も含めて皆が患者さんに対して共通見解でなければならないと思う。一部が「・・・様」とお呼びし、他は「・・・さん」とお呼びしている状態は、患者さんに「我々はチームで患者さんに向き合ってないです」と言っているようなものだ。開業まで、大きな病院で働いてきたが、いつも不思議に思うことがあった。看護師や事務員が患者さんに我々医師のことを話す際に、「○○先生は今手術に入っておられますので、・・・」とか「○○先生が今診察に来てくださいますよ」とか言うのだ。身内のことを第三者にお話しするのに敬語である。まさしく、医師と他の職員が一体でないことを表している。一流企業であれば、このような社員は即刻クビだ。患者様とお呼びする前に、まずはこういったことからやり直さなければならないのではないでしょうか。

私が開業しようと思った理由の一つは、こういったわけの分からない業界で働きたくないと思ったことである。ちょっと古い話しだが、まさに阪神タイガース時代の江本氏が「ベンチがアホやから野球やってられへん」と言って辞めたのと同じ気持ちだ。箕山クリニックでは、職員全員が患者さんを「・・・さん」でお呼びするようにしています。患者さんと同等で向き合わなければという意識を持つことで、受付にもプロ意識が生まれてくるものと考えております。ただ、勘違いして上から物を申したり、またそのような態度をとったりするようなことのないよう、きちんと丁寧・親切な行動をとるよう教育しております。しかし、どうしても直しきれないのは、ときどきトレーナーが私のことを患者さんやジム利用者にお話する際、先生って言ったり敬語を使ったりしてしまうのです。今まで競技現場を中心に働いてきて、ドクターとの関わりが当施設みたいに緊密でなかった影響ですかね。勘弁してやってください。でも皆さん、「・・・さん」と呼ばれることで、職員とフレンドリーに話ができると思いませんか。だって、皆さん不安を抱えて病院・診療所に行くんですものね。いっぱい話ししたいですよね。

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