「なぜスポーツ医学なのか」 2004/09/14
 皆様、お待たせいたしました!(別に、待っていませんでしたか?)ついに、1回目のコラムを掲載することとなりました。初回ということで、まずは、私が何故いろいろある診療科のなかから、スポーツ医学というものを専攻したのかをお話したいと思います。少し長くなってしまいますが、我慢して読んでみてください。

 話は高校時代にまでさかのぼり、いろいろ将来就きたい職業の中から医師になることを選んで、日々受験勉強と部活に明け暮れていた頃です。あるきっかけでスポーツ医学という新しい分野があることを知りました。その頃は、まず医学部に受かることが先決で、とくに自分が将来専攻したい診療科というのはなかったのですが注)、スポーツ医学という分野を知ってからは、将来これを専門にしようと、まだ何となくではありましたが心に決めました。その理由は、まず、第一に自分自身もスポーツを一生懸命行っていて、スポーツそのものが好きであった。第二として、わずかながらでも自分も将来スポーツで生活できたらと思ったことがあり、スポーツ選手を尊敬していたので、医師になることを決めた自分はスポーツ選手の裏方として医療面からサポートできればと考えました。
 
そういった思いを持って、無事医学部に入学できたのですが、医学部での勉学は苦痛そのものでした。元来負けず嫌いで、自分の好きな分野に関しては誰にも負けたくなく、その分野だけの勉強は人一倍どころか百倍行うのですが、注)にもあるように学生のときには全科目を学ぶわけで、当然とはいえ勉強したくないことまで勉強しなくてはいけなったのです。それでも、将来自分のやりたいことを行うには基礎となるすべての知識が必要だと言い聞かせ、しっかり勉強してきました。ご安心ください、今となっては、忘れてしまっていることも多少ありますが、ちゃんとすべて学んだのですよ。
 
そんなこんなで医学部での日々のなか、スポーツ医学とはどのようなものなのか詳しく知りたく、いろんな先生(医学部の先生ですから、当然医者ですね)に聞いてみたのですが、まだその頃スポーツ医学というものが確立しておらず(今でもそのように感じますが)、先生達もよく分からないという状況。そこで、自分なりに「スポーツ医学とは」を考え、次のように大別しました。(1)病院でスポーツ選手に対する専門外来や手術を行うパターン。 (2)競技現場で、選手のケガなどに即対応するチームドクターのようなパターン。(3)どのようなトレーニングをしたり栄養をとったりするのが最適なのか、競技パフォーマンス向上のために日々研究するパターン。このうち(1)か(2)を将来行えている医師であればいいなと漠然と考えていました。
 
このように思いながら、医学を勉強していたあるとき、医療とは?医者とは?ということを考える日が来ました。考えたというか、悩んだというか・・・。どういうことかというと、人の運命というのを考えたとき、医療というのは人を助けているようなふりをして、その人の運命を変えてしまっていることもあるのでは・・・。また、人を助けるために、多くの動物たちが実験・研究されているのは、結局人間のエゴ?それを使って、人の運命を変えるまでの治療を行ってしまうことのある医療は、医者のエゴ?といったように、考えれば考えるほど、医学を学んでいることに疑問を持った時期があったのです。そんなとき、ふと思ったのが、病気になってから治療するということでなく、病気にならないように予防を行っていくことも医療であり、このような予防医学は自分の考える医者のエゴではないのでは!?と思ったのです。これが、自分をさらにスポーツ医学の方向へ導いたきっかけでもありました。どういうことかというと、疾病予防のために運動(スポーツ)は欠かせない一つの手段であり、スポーツ医学は、予防医学をも含んだ総合的学問であると考えたのです。つまり、スポーツ医学は、とくにスポーツ選手のためだけの医学ではなく、一般の人々も運動によって健康を維持するという、これから本当に必要とされる医学であると、自分なりに理解したのでした。このとき以来、医療・医者ということに対する悩みは消え、将来スポーツ医学をマスターしようと決め、現在に至っているわけです。
 
医者になってからはどのような経験をしてきたのか、また医師になってからスポーツ医学についてどのように考えてきたかは、このホームページの私のプロフィールと私の考えるスポーツ医学とは?を見ていただくと分かるかと思います。
 
また、医者になってからのことや、なぜイギリス留学だったのか等々、今後コラムにどんどん載せていきたいと思います。今回は、1回目にてちょっと気合が入りすぎ、長〜くなってしまいましたが、今回のように堅い話ばかりでなく、医学とは関係のないちょっとした小話も時々掲載していきたいと思いますので、楽しみにしていてください。 

それでは、また次回。

注) 意外と知られていませんが、医学部では将来の専門科にかかわらず、内科・外科・小児科・・・etc、こういった臨床科目だけでなく、生理学や解剖学、病理学といった基礎医学まで、全科目6年間勉強するのです。それで始めて、医師国家試験を受けることができ、それに合格すれば医師免許証を得られます。その後、やっと自分の専攻したい科目を行っていくことができるというシステムになっているのです。

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